大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和25年(う)104号 判決

職権により記録を調べてみれば、本件起訴状記載の公訴事実は、前示のように、被告人は、昭和二四年七月一日から同月二九日頃までの間数回に亘り、ダイナマイト三六本を窃取したとあつて、犯罪事実が単一で一罪として起訴されたものか、または、犯罪事実は数個あつて併合罪の関係があるものとして起訴されたものか、その訴因自体不明確であること前説示のとおりであるから、原裁判所においては、その点につき検察官に対し釈明を求め、これを明確にして、審理すべきが相当であつたと思料されるところ、原審公判調書によれば、あえて釈明を求めた形跡はなく、しかも原判決によれば、被告人は昭和二四年七月一日頃熊本県八代郡下松求麻村字深水西松建設株式会社墜道工事現場浜松組工事場において、同会社所有渡辺里見保管に係る新桐ダイナマイト五本(一本四五瓦)時価千百円相当を窃取したものである。と認定し、主文において、被告人を懲役八月に処する。訴訟費用は、全部被告人の負担とする。と宣告し、その理由説示において、公訴事実は、新桐ダイナマイト三六本を窃取したとなつているが、判示事実以外の三一本を窃取したという事実は、その日時及び数量が明確でないので、刑事訴訟法第三三六条により無罪を言渡す。としているところである。それでもし、本件起訴状記載の犯罪事実が単一で、一罪として起訴されたものとすれば、審理の経過において、犯罪の日時、回数、数量についての記載と証拠とが一致しないことが明らかとなつた以上、原裁判所としては、公訴の同一性を害しない限り、刑事訴訟法第三一二条に基き、訴因の追加、撒回または変更の手続を経て審理判決すべきが相当であつたと思料するところ、原審公判調書を調べてみれば、原裁判所はその手続を履践した何等の形跡も存在しないところである。さすれば、その点につき、原裁判所の訴訟手続は法令に違反する不法があるといわなくてはならない。また、もし、本件起訴状記載の犯罪事実が数個あり、併合罪の関係があるとして起訴されたものとすれば、原裁判所においては、検察官に対し釈明を求め、公訴事実中の犯罪の日時、回数、数量を特定し、審理判決すべきが相当であつたところ、原審公判調書によれば、この点についても釈明を求め訴因たる事実を確定した形跡もなく、漫然、前のように原判決理由説示において、ダイナマイト三一本については、窃取の日時及び数量が明確でないとの理由のもとに無罪を言い渡す。としているが、かように併合罪の関係にあるものとすれば連続犯の規定のない現在においては、その三一本の窃取の事実につき無罪を言い渡す際は、主文においてその言い渡しをする必要のあること多言を要しないところである。さすれば、この点につき、主文において無罪を言い渡さなかつた原判決は、審判の請求を受けた事実につき、判決をしなかつた不法ある場合にあたるものといわざるを得ない。

果して然りとすれば、原判決は、訴訟手続に法令の違反があるか、審理不尽のため事実を誤認し、延いて法令の適用に誤があることに帰着し、それ等の不法は、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄さるべきである。

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